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本当は自給自足など建前で、金儲けのために鮫島はここに住み着いた。教義のために、信者は身を捧げる。鮫島はそれを利用して、金儲けをしていた。
鮫島は勝手に植物を調合し、薬と偽って売っていた。そのために、中本はショック死となり、その事実を鮫島は揉み消している。
「村多先生もスパイですか?」
井上は首を振っていた。
「あれは、ただのバカだな。性格が悪いから特定の恋人ができない。昔からね」
行方不明の多くが、スパイだと疑われていた可能性もあった。
「殺されて、餌になっているのでしょうか?」
鮫の餌、鰐の餌となるとカッコいいが、豚の餌はきつい。豚肉があちこちにあるせいもあって、吐きたい気分になる。
「餌にされる前に、鮫島の証拠を掴みたいよね」
将嗣は、証拠は掴んでいなかった。噂だけでは、藤原家であっても動く事ができない。
たとえ死体があっても、それだけでは四区は犯罪にならない。誰が殺したのか、特定できなければ、制裁ができないのだ。
「でも、天神で死体の処理はダメなのでしょう?それは、現場で捕まえられる」
俺が正座を崩していると、井上が来て俺の頭にゲンコツを落としてゆく。
「子供の出番はない。部屋に帰っていろ」
ここからは、大人の話らしい。
「藤原、季子さんのケーキが目当てなのか?」
藤原は時折キッチンを見ていた。季子が気が付いて、ケーキを丸ごと持ってきてくれた。
「そうなんだけどさ。印貢が俺に相談しなかったっていうのが、少し腹立つよね」
「だから、犯罪ではなくて、あれが普通なのかと思ったよ……」
俺の部屋に行くと、藤原は寒いを連呼してどこからかストーブを持って来た。
ストーブの上には、おでんが乗せられる。このおでんの味からすると、季子が用意したものであろう。
「印貢、死体に普通なんて無いよ。だから、印貢は追い掛けてしまったのだろ」
それにと、藤原が付け足す。安全だと思って藤原は、俺を天神の森経由で登下校させていたが、安全では無かったと知って悔しかったらしい。
「俺、印貢がいない世界は考えられないからさ。こんなに、スリリングで飽きない相手は初めて」
藤原はおでんを食べていた。
第四章 笑顔が欲しい
藤原は、おでんの合間にケーキを食べる。この味覚は、俺には理解できない。
俺がおでんを食べていると、藤原に大根を取られた。
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