学園刑事物語 電光石火 幕間

42/48
前へ
/48ページ
次へ
「ちょっと殴られた。大丈夫だ」 「まあ、そのちょっとで骨は折れているみたいだけどね」  佳親は、やはり医者に行こうかと俺に聞いてくる。肋骨ならば、年中折っているので問題はない。 「肋骨ならば、折れたまましか対応がないからいい」  藤原は、ぐったりと座り込んでいた。 「印貢。ゴメン。俺の家は危険だよね。他のメンバーは、刺客が来ると藤原の家の者が護衛するけど、印貢には誰も付かなかった……」  それは、俺が庭にいたせいでもあり、俺が天神の人間のせいもある。 「そうだよね。弘武は中途半端な存在だからね。天神でも天狗でもなく、四区でもない一般人。藤原も対応し難かったか」  佳親は、俺の傷を叩いて確認していた。傷口よりも、骨に響いて痛い。 「この家に来させてはダメでしたよね。印貢が消えたらと思ったら、泣けてきた……俺、この家を出よう……ずっと印貢といたい」 「あのなあ。親がいるのだから、親といろよ。俺は他人。ここに来なくても学校では一緒だし、問題ない!」  藤原は、泣きそうな顔で俺を睨んでいた。 「学校では、印貢を独り占めするのは難しいだろ。印貢にも常に取り巻きがいてな、印貢は一人を気取っているけど、本当は取り巻きが印貢の一人をキープさせてやろうと、必死で周囲の人間を遠ざけているの」  佳親が堪え切れずに笑いだして、そのまま止まらずに苦しんでいた。そんなに、藤原のセリフは面白かったのだろうか。 「由幸、弘武の独り占めがしたいのか……そっか、弘武の一人は周囲の協力なのか……」  佳親が状況を笑って把握していた。 「母親に二軒目の家があるから、そこに俺の部屋を作ろう。母屋よりも安全だ。親父の刺客は来ない!」  藤原は、何か名案を思い付いたらしい。 「弘武、良かったな。由幸は弘武といられる部屋を準備中だよ」  どこが良いのだ。藤原は、ちゃんと両親もいて、こんな立派な家もある。出てゆく理由などない。 「由幸って、将嗣にそっくりだ」  佳親が、将嗣のいる別邸を見ていた。もしかして、その建物が、将嗣が好きな人を独り占めするために建てた家なのか。でも、いたのは佳親であった。 「藤原、女の子を連れ込む部屋ではないのだぞ。いっつも、連れ込んでいるけど。俺を同等にするな」
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加