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「ちょっと殴られた。大丈夫だ」
「まあ、そのちょっとで骨は折れているみたいだけどね」
佳親は、やはり医者に行こうかと俺に聞いてくる。肋骨ならば、年中折っているので問題はない。
「肋骨ならば、折れたまましか対応がないからいい」
藤原は、ぐったりと座り込んでいた。
「印貢。ゴメン。俺の家は危険だよね。他のメンバーは、刺客が来ると藤原の家の者が護衛するけど、印貢には誰も付かなかった……」
それは、俺が庭にいたせいでもあり、俺が天神の人間のせいもある。
「そうだよね。弘武は中途半端な存在だからね。天神でも天狗でもなく、四区でもない一般人。藤原も対応し難かったか」
佳親は、俺の傷を叩いて確認していた。傷口よりも、骨に響いて痛い。
「この家に来させてはダメでしたよね。印貢が消えたらと思ったら、泣けてきた……俺、この家を出よう……ずっと印貢といたい」
「あのなあ。親がいるのだから、親といろよ。俺は他人。ここに来なくても学校では一緒だし、問題ない!」
藤原は、泣きそうな顔で俺を睨んでいた。
「学校では、印貢を独り占めするのは難しいだろ。印貢にも常に取り巻きがいてな、印貢は一人を気取っているけど、本当は取り巻きが印貢の一人をキープさせてやろうと、必死で周囲の人間を遠ざけているの」
佳親が堪え切れずに笑いだして、そのまま止まらずに苦しんでいた。そんなに、藤原のセリフは面白かったのだろうか。
「由幸、弘武の独り占めがしたいのか……そっか、弘武の一人は周囲の協力なのか……」
佳親が状況を笑って把握していた。
「母親に二軒目の家があるから、そこに俺の部屋を作ろう。母屋よりも安全だ。親父の刺客は来ない!」
藤原は、何か名案を思い付いたらしい。
「弘武、良かったな。由幸は弘武といられる部屋を準備中だよ」
どこが良いのだ。藤原は、ちゃんと両親もいて、こんな立派な家もある。出てゆく理由などない。
「由幸って、将嗣にそっくりだ」
佳親が、将嗣のいる別邸を見ていた。もしかして、その建物が、将嗣が好きな人を独り占めするために建てた家なのか。でも、いたのは佳親であった。
「藤原、女の子を連れ込む部屋ではないのだぞ。いっつも、連れ込んでいるけど。俺を同等にするな」
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