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「していないだろ。女の子なら、ここでも構わないけど、弘武はここでは危険だろう。だって、刺客を見ると逃げないで対峙してしまう。俺は、弘武に怪我させたくないの」
俺は、ここに来なかった方が良かったのではないのか。
「帰る!」
そこで、又雪が降り出していた。
「待てって!」
佳親は笑いながら、建物の中に入って行った。どこが可笑しいのかは分からない。
丘の上で、藤原は俺を捕まえていた。
「クリスマスにキスしたよね。あれ、俺、本気だよ」
俺は慌てて藤原を見た。
「本気って何?」
藤原は俺を抱き締めていた。
「誰よりも俺は弘武が好き。……弘武だけが好き。どんなに女の子とエッチしても、これが弘武だったらいいなって思った。俺のは、そういう好き」
そういう好きって何なのだ。俺にどうしろと言うのだ。
第七章 僕と君がいる
藤原に庭で抱き込まれていると、再び小雪が舞っていた。これは、降っているのではなく、風に飛ばされて屋根の雪が舞っているのか。
藤原の家の光の中で、雪が舞っていた。
「あの、印貢……俺の必死の告白にも、上の空でしょうか?」
しまった。考えても回答が出なかったので、他に興味が移ってしまった。
「考えていたよ!」
でも、回答はない。
「……というのかさ、どんな好きでもいいのならば、俺も藤原が好きだよ。一緒にいると楽しくて、ずっと一緒にいたいよ。喧嘩をしに行く時も、藤原と一緒なら負ける気がしない」
藤原と一緒にいると、世界は俺だけの世界ではなくて、俺と藤原の間にある。俺には、藤原が見えていて、藤原にも俺が見えていればいい。
その延長線上にエッチがあるのならば、それは、すごく楽しくて嬉しい。
「藤原と、エッチするのは嫌じゃない。でも、俺、男女の関係みたいなのは、今は、何か重くて厭だ」
飛んでいる雪みたいに軽くて、溶けるみたいなものがいい。
「あんな雪みたいな……」
藤原が雪を目で追っていた。でも、地面に落ちずに雪は、夜に飛んで行った。
「風、強くなってきたよね。建物に入ろうか」
藤原の部屋に行くと、当たり前のように、伊東がいて鳴沢がいた。俺が、混じろうとすると、藤原は別の部屋に入って行った。
「……ここじゃないの?」
藤原の部屋は、別にもあったらしい。
「ここは、空き部屋だけどさ。今から、印貢用にする。何か欲しい?」
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