学園刑事物語 電光石火 幕間

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 空の部屋には、何も置いていなかった。部屋には、ブラインドだけはあるが、絨毯さえもない。  あまりに何もないので、何か欲しいの前にここに居ろというのが、拷問のような気がする。 「……寒いよね、ここ」 「そうだね。ホットカーペットを持ってくるよ。それと毛布」  俺は本当に何も無い部屋に入れられると、部屋に鍵を掛けられてしまった。藤原の家には、外から掛けられる鍵が多すぎる。しかも、中から出られないというのは、作りとして変であろう。  何もする事がないので、ブラインドを少し開くと、外を眺めてみた。藤原の家は高台なので、こね部屋からは港がよく見えた。庭のライトアップもあって、青く木々が光っている。  窓が開くのかと確認すると、ドアが勢いよく開き、藤原が飛び込んで来た。 「窓から逃げるな!」 「……開くのか確認しただけ……」  どうも、窓に触れるとセンサーに引っ掛かるらしい。 「テレビ」  暖房機器を取りに行ったのかと思ったら、まず大型のテレビを運んできた。俺の部屋にはテレビが無いが、藤原はテレビが大好きらしい。  他の男性がやってくると、テレビは壁にはめ込むように設置して行った。 「……もう少し、待っていて。この部屋から出ないでね」  出ないでと言うよりも、ドアに鍵は掛けられているし、窓は開かない。  俺は、ブラインドを上げると、電気を消した。  夜の港は綺麗で、長く見ていても飽きる事がない。今度は、部屋の電気が付いていない事に、焦った藤原が走り込んできた。 「どうして、真っ暗?印貢、居るよね?」  俺は、ブラインドの前で振り返る。 「……港がきれいだよね。でも寒い!」  藤原が、長い溜息をしていた。 「この竹のブラインドもいいよね」  藤原は、そこでやっとこの部屋の冷暖房を思い出したらしい。 「ごめん、スイッチ入れていなかったよね」  全部屋に空調設備が整っていた。 「加湿機能もある。でも、俺は床が冷たいのが苦手だからさ」  夜だというのに、家電量販店から配達があり、ホットカーペットが敷かれた。そこに、ブライドと同じ型のテーブル、ほかほかのクッション型背凭れなども運ばれてくる。 「伊東は、向こうで鍋をしている。まあ、いつも居るからさ」  やっと藤原が座ると、ここにも鍋を運ばせていた。 「鍋は皆で食べるのがいいだろ?」  藤原が、俺をじっと見る。 「二人がいい。話もあるし」
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