学園刑事物語 電光石火 幕間

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 並んで座って、窓を見つめる。窓は、床近くまでガラスになっていたので、まるで雪で出来たかまくらのような気がする。ついでに電気を消し、テーブルに蝋燭を立てた。 「クリスマスイブも、こうしたかったよな」 「鍋を食べたかった?」  この鍋は、何だろうか。雰囲気はしゃぶしゃぶであったが、野菜が少ない。 「二人になりたかった」 「藤原、野菜はどうした?」  テーブルの下も覗いてみたが、野菜がない。 「肉があればいい」  この肉食は、野菜をわざと置いてきたらしい。俺は、廊下に置かれた野菜を見つけ、運んで来た。 「話って何?」  蝋燭が大きい。何故、こんな蝋燭があったのだろう。 「四区と天神って対なんだよ。親父は母さんを裏切っているのではなくてね、かけがえのない相棒を持っていること、その相棒が絶対なだけなの」  俺の心のモヤモヤに藤原が回答する。将嗣と、俺の兄の佳親は、俺が生まれる前から関係を持っていた。季子は、それを口に出しては何も言わない。  俺は、それが気になっていた。季子が辛いのではないのかと、時々気になってしまっていた。 「母さんと季子さんは、親父達の関係性を理解したうえで、結婚している。親父は、母さんには、半端なく優しくて甘い。多分、佳親さんも季子さんには優しいだろ?」  俺は、考えてしまう。優しいから許されるというものではないだろう。 「弘武って、潔癖な面があるからね。親父は、佳親さんの家族も含めて、全部、愛おしいのさ」  将嗣の最後の願いは、佳親の息子と遊ぶ事であった。佳親は、季子も含めて、藤原家と家族ぐるみの付き合いをしていた。藤原も、第二の父のように、佳親を慕っている。 「息子と遊ぶの?娘だったら、いらないの?」  藤原が首を振っていた。 「娘だったら、箱入り娘にして大切に大切にしたかったそうだ」  それで、藤原の嫁にするのが夢であったという。  将嗣は、佳親の子孫まで愛したかった。だから、将嗣は季子に優しかった。 「俺は、弘武に出会って、親父の気持ちを体験したよ。俺も、弘武を愛したい。それで、俺は弘武の子供にも慕われて、一緒に親になってゆきたい。俺の子供と、弘武の子供が結婚したら、最高だよね」  それは、俺も理解できる。 「俺も、藤原と同じだ」  これが、恋なのかも愛なのかも分からないけど、俺も藤原と一緒に生きていたい。 「俺は、弘武と一緒にいたい……」
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