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「待合室にはストーブがありますよ」
駅員が声を掛けている。俺が無視して眠っていると、駅員に肩を叩かれた。
「ストーブにあたっていなさい」
「大丈夫です。ここで、いいです」
しかし、無理矢理、腕を引かれて連れて行かれてしまった。
待合室には、幾人もの人がいて、俺がストーブにあたるというスペースはない。人が来る度にドアが開閉し風が入り込み、しかも、待合室が小さかったので、椅子が一杯になっていた。床に座ると、かなり寒かった。
待合室の窓から、外の通りを見てみたが、雪は止まる事がなく、道路も白くなっていた。
このままでは、家に帰れない。ここでじっとしていても仕方がないので、壁に貼られている地図を眺めてみた。
待合室のテレビから、雪の情報が流れ続けている。その情報と地図を照らし合わせてみると、山の向こうは雪がなく電車が動いていた。ここの山はハイキングコースレベルの山で、頂上は公園になっている。通常ならば、二時間もあれば向こう側に行ける。
「行くか……」
降り続く雪を見ていると、止む気配はない。雪情報でも、深夜まで降り続くとなっていた。
身支度を整えると、駅舎を出てみた。どこかのテレビクルーが中継をしていた。ここは、かなり酷い状況なのかもしれない。そのまま歩き出し、山へと登り始める。
雪に足を取られて歩くというのが、どんなに重労働であり、時間がかかるかは知っていた。しかし、想像以上に前に進まない。新雪はよく滑り、それなりに装備していた筈だが何度も転ぶ。
「下りはむしろ滑り降りるか……」
登りで二時間経過していた。下り始めると、今度は雪がなく、歩いて降りる。反対側の駅に到着すると、三時間は経過していた。でも、待ち続けるよりもいい。腹が減っていたので、立ち食いそばを食べると、電車に乗り込む。しかし、家までまだ距離があるというのに、再び雪が降り出した。
「又、雪……」
電車のダイヤが乱れ始め、又、電車が動かない。
再び駅舎を出ると、走っていたバスで別の路線に移る。そこで、既に夕刻になっていた。又電車に乗り込み、やっといつもの路線に戻ったあたりで、夜の中には白いものが混じっていた。
「雪に追い掛けられているような……」
クリスマスは嫌いだが、雪は嫌いではない。雪の日は、雪合戦をしてスキー場に行った。
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