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重石は手を振って、山川と共にその場を離れていく。一言も言葉を交わさなかった山川は、何度も振り返って絵里花を見ている。その視線に、絵里花は少し違和感を覚えた。
それから、絵里花は史明と共に発表をする会場へと入って、最終の打ち合わせをした。発表の段取り、パワーポイントを使うためのプロジェクターなどのチェック。一つひとつの準備を余念なく終えると、控室に向かう。
出されたお茶を飲みながら、しばらく時が経つのを待っていると、室内のスピーカーから会場の音声が流され始める。どうやら学会が始まったらしい。
主催者の挨拶、日本史界における重鎮による基調講演。会のプログラムが進んでいくにつれて、じわじわと絵里花の中の緊張が高まっていく。思えば、絵里花自身こんな大きな会場で識者を前に何かを発表するなんて、経験のないことだった。
まもなく、研究者たちによる研究発表が始まる。史明はその三番手で、午前中の最後に壇上に上がる。
絵里花は、側にいる史明に何か話しかけて気持ちを紛らわせようとしたけれど、気の利いた言葉は何も出てこなかった。それ以前に、より良い発表をしようとしている史明の、精神の集中を乱してしまいそうで、何も言葉をかけることはできなかった。
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