学会

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「今日私がここで発表したいと思っているのは、戦国初期の楢崎氏の新発見の史料に関わる研究と、それに伴い確認できた未知の城の存在についての研究です」 史明の語りに呼応して、絵里花がパソコンを操作してその概要をプロジェクターに映し出す。すると、それまでのざわめきが嘘のように、会場は水を打ったように静かになった。 研究発表をする史明の声が会場に響き渡る。一言も聞き漏らすまいとするかのような聴衆たち。 絵里花は、学会独特の緊張感を感じながらドキドキする胸の鼓動を抱え、自分のやるべきことに徹した。想定通り無事に終わることだけを、ただ祈っていた。 史明の研究発表は、その思いがけなかった容姿以上の大きな驚きと成果をもたらし、この学会を大いに意義あるものとした。 史明はアガることも物怖じすることもなく、堂々とその研究成果を披露し、発表は成功に終わった。 史明の発表が終わると、これから昼休憩に入るとの案内があった。 「お疲れさまでした」 絵里花がパソコンなどを撤収させながら、史明に声をかける。史明もホッと表情を緩め、絵里花へと労いの言葉をかけようと思ったのだろうか。絵里花へ歩み寄ろうとした時、史明の元へと会場にいたたくさんの研究者たちが詰めかけた。発表や質疑応答の中で語り切れなかったもっと詳しいことを、きっと知りたいのだろう。
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