彼がメガネを外したら…。【最終節を大幅加筆しました】

来訪者

絵里花のこの恋を発展させるためには、どうしたらいいか……。
学生時代にはそれなりにモテて、何人かと付き合った経験のある絵里花にも、それは全く見当がつかなかった。

それで、とにかく毎日渾身の力でオンナを磨いているつもりなのだが、それがいっこうに史明には響かない。粗は探してくれるのに、オンナの部分は見てくれない。

そもそも、史明が歴史以外に心を奪われることなんてあるのだろうか……？
冗談はおろか、無駄なことを喋っているところを、絵里花は聞いたことはない。きっと頭の中は、今対峙している研究対象のことしか考えていない。
史明が恋をして、誰かを愛することあるなんて、とても絵里花には想像もできなかった。

史明には眼中に入れてももらえず、絵理花の想いばかりが募っていたある日のこと、普段は人気のない収蔵庫が、花が咲いたように明るくなった。
地元の大学で歴史を研究している女子大学生が、この歴史史料館の見学に来たのだ。

「それじゃ、岩城さん。ここは、お願いするよ？」

階下の展示室を案内してきた別の研究員から声をかけられ、収蔵庫の案内は、いつもここに詰めている史明に託された。

「お仕事の邪魔をして申し訳ありません。よろしくお願いします」

史明に向かって、礼儀正しくお辞儀をする女子大生。絵里花の向かいの持ち場を離れて、女子大生のもとへ行く史明。