一章

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彩子が初めて歯ブラシを間違えてから一週間。 その間に彩子は四回歯ブラシを間違えて使っている。 毎日毎日、今日も間違えるのではないかとドキドキしながら朝の時間を迎える。 とても体に悪い。 ストレスでつるのところのネジがゆるみそうよ。 私が毎日ヤキモキしているのに、彩子は今朝も鼻歌を歌いながらお父さんの歯ブラシに歯磨き粉をつけている。 これで間違えたのは五回目だわ。 あとどれくらいこんな毎日が続くのかしら。 でも、彩子のことを思うとこのまま気づかずにいる方が幸せなのかもとも思うの。 だって、お父さんと度々『間接ディープキス』しているなんて気づいたらショックでしょ。 見ている私でもオエーッと思うのに。 あと一週間もしたらお父さんの歯ブラシが開きだして、彩子も間違えないようになるかしら。 立派なメガネとして彩子の役に立ち続けていたいけど、歯磨きに関してそれもままならないのなら、せめて彩子がこの事実に一生気付かないことを祈り続けていよう。 神さま、彩子が間違えてお父さんの歯ブラシで歯磨きをしていることに一生気付きませんように…。
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