第一章 運命が無いのなら

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何故か幼稚園以来と言った事にひどく同情されたが、全く腑に落ちない。 ふたりの相手をするのが面倒になったので、さっさと神社に寄って家に帰る事にした。 「一途ですますなよ。こっちには色々事情があんだよ。ま、信じてもらえないだろうけどさぁ。」 しかし、先生には感謝しなくては。無愛想とか言ってすみません。 「大体、忘れるなんて酷いじゃないか。忘れたいんだったら言ってくれよ。そしたら、〈俺〉だって……」 ブツブツと愚痴をこぼしながら歩いていると、ふと怖くなった。 もしも、もう普通の人間になろうと言われたら……〈俺〉は何と答える? きっと分かったと言うだろう。君に言われたら必ずはいと答えるだろう。 でも、君は言わなかった。偶然忘れてしまった? 何か記憶が無くなる様な事が起こった? 〈俺〉に言えなかったのか? 「もしも、君がこのまま思い出さなかったら……それならばいっそ。」 君を忘れられない。忘れたくない。忘れるくらいなら、そうなるくらいなら…… 「今のままでいい。」
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