第一章 運命が無いのなら

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はっとして立ち止まる。壁にぶつかりそうになったのだ。 「あっぶな。焦った~!」 しかし、よくよく見ると壁だと思ったものは壁ではなかった。 「これは……結界、かな? この時代で見るのは初めてだ。」 結界の向こうには神社が見える。猫が1匹境内に座っているのが見えた。 しかし、ここには神社は無いはずだ。透和の家は学校から一番遠いので、その近くの神社の担当になった。目的の神社まではまだまだあるハズだ。 「随分立派な神社だけど、こんな所にって、え……!?」 最初は結界のある神聖な神社かと考えたが、そうじゃなかった。この神社、現実の道や家を無視して存在している。つまり、普通の人間には見えない神社なのだろう。 「マジか……どうしよう。」 いつもと違う道を通ったせいで、どうやって回り込んだら目的の神社に行けるか分からない。突っ切って行けば早いのだか、神社が見えている透和にとっては厄介だ。 すると、一緒に頑張ろうと言った愛乃の笑顔が浮かんだ。そろそろ日も暮れるし急がなくてはならない。 「結界壊さなきゃいいよね?」 結界をすり抜けて神社に入った。とりあえず神社の裏へ行って道を探そうとすると、おばあちゃんの声に呼び止められた。 「ちょっと、そこのあんた。」 「へっ?」 「この神社が見えるのかい? 珍しい人間だね。しかしね、興味本位で入られたら困るんだよ。」 周りを見渡すが誰も居ない。居るのは可愛い猫だけだ。
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