第一章 運命が無いのなら

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「……随分、話もしてない。」 透和の言葉に顔を見合わせる武志と彰弥。 まあ、透和の様子を見ていれば好きなのだろうと見当がつく。そして、それが訳有りだと気が付いたのだろう。最後にニヤッとしてふたりは歩き出した。 学校生活は緩やかに時間が流れていく。窓の外を走る車の流れを見たり、今日は当てられる番だから友達に答えを聞いたり。 これで、傍に君が居てくれたら。 今日も君の背中を見る。何億年も一緒だったのに、今は片思いの男子高校生だ。でも、君を見ているだけで俺は……。 「透和?」 「わっ!?」 振り向くと彰弥がニヤニヤして立っていた。 「そんなに驚かなくても。また遠藤さんの事見てたんですか?」 「みっ、見てないよ!」 「いいって。隠さなくても。好きなんだろ?」 「いや……あ……。」 自分でも顔が真っ赤になるのが分かった。他人に片思いの相手がバレるのはこんなに恥ずかしいものなのか。頼むからほっといてくれ。
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