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帰り道、ケースの中のサングラスを覗き、僕は、ほくそ笑んだ。
不思議な魅力がある理由は、その値段だけじゃない気がして、早速、眼鏡を取り出し顔にかけた。
別段変わったつけ心地は無い。
でも、自信たっぷり街を歩けた。
行き交う女性が僕を見ている気がしたけど、黒いレンズのせいで、目線を逸らす必要もなく、キョロキョロと、このカッコイイサングラスを付けた自分の姿が映る物を探していた。
ブティックのショーウィンドウに映る自分を見つけ、その姿に暫く見入った。
やっぱりカッコイイじゃん。
今日のジャケットにも、とても似合う。フォーマルにも良いだろう。
この買い物に、僕は満足した。
その時。
「あの、すいません」
唐突にかけられた、女性の声に、反射的に振り返った。
見れば、高校生位の女子が二人いた。そして、顔を赤らめて、徐に口を開く。
「写メ、撮らせて下さい」
「は、はい?」
訳が分からず、呆ける僕の周りを、嬉々として動き回ると、事もあろうか僕を真ん中に。
「はい、チーズ」
えええ!?
「ありがとうございました」
そう言って、二人の女の子は嬉しそうに去っていった。
僕はその場で硬直した。
知らない女性が僕を見ながら道を行く。
あの娘もこの娘も。
えっと、モテた、って事?
僕は慌てて、サングラスを外して、それをまじまじと見つめた。
「この眼鏡、凄いぞ」
そのサングラスをかけ直し、再び道を歩き出す。
やっぱり行き交う女性が振り返る。皆、僕を見ている。
こんな経験初めてだ。
自然に顔が綻んでしまっていた。
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