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ふと、前から来る女性に目がいった。
艶々の髪をした、ものすごい美人に、僕の胸がドキドキと高鳴った。
声をかけてみようか。
あっちも、僕を意識しているみたいだし。
よ、よし。
「こ、こんにちは」
「はい、こんにちは」
突然声をかけられて、退かれると思ったけど、女性は照れながら、挨拶を返してくれた。印象は悪くない。
「あ、あの、その…」
でも、後の言葉が続かない。焦れば焦る程、頭の中が真っ白になってしまった。
徐に、女性が言った。
「すいません、ハグ…していい?」
えー、マジで!?
「ど、ど、どうぞ」
僕は、なんとか口を動かした。
ムギュ
女性の柔らかさと、なんとも良い匂いに、僕が爆発しそうになった。
「きゃーっ、可愛いっ」
彼女の歓喜の声に、僕は興奮したのだった。
そして、なんと言うか、本能をそのまま言葉にしてしまった。
「欲しい」
女性は照れながら、うん、と頷き、僕の手を取って、並んで歩き出した。
これ以上、何か話せば失敗しそうな気がして、僕は無言のままだった。
ナンパしてしまった、この僕が。
信じられないが、このサングラスのお陰だ。
自動的に催眠術でもかけているんじゃないかと、再び眼鏡を外して、吟味する。
女性と目が合う。素顔の僕と見つめ合う。
すると。
女性がいきなり走り出した。
「ええ、ちょっと!?」
そして小走りに、一目散に去っていってしまった。
「そ、そんな…」
ガッカリした。
しかし、それもつかの間、僕は確信した。
好かれるのも、嫌われるのも、この眼鏡せいだ。
この眼鏡は、かければなぜかモテてしまう。
本物の、モテモテ眼鏡、だったのだ。
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