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「ハグして良いよ」
僕は、暫く歩いて見つけた、その若い女性に、両手を広げて言った。
「し、失礼します」
礼儀正しく、僕の胸の中に飛び込んできたその娘は、自分好みの可愛い子ちゃんだ。そう吟味したのだ。
だから当然、興奮していた。
僕は腕を回し、その娘を包むように抱き返した。
想像以上に華奢な骨格、むせ返るような甘美な香りに酔いしれる。
か細い首に顔をうずめて、首筋を甘く噛んでみると。
「あん」
反応に満足して、僕はそのまま、顔を正面に持っていき、唇にキスをした。
そして。
「この後は、ホテルで、遊ばないか」
「うん、良いよ」
ホテルに着いてしまった。
心臓が爆発しそうな程、高鳴る。
受付が無人で、部屋の使い方が分からず狼狽えたが、彼女は気にもせず、僕にべったりのままだった。
絶対に、サングラスを外したりしない。
シャワーの時も、ベッドの中もだ。そう心に決めた。
テレレレ テッテテーン
事が済んで、2人でホテルを後にする。
ラブラブだ。
僕は、歓喜に震えた。
生まれて初めて、恋人が出来たのだ。
こんな簡単に。
この眼鏡だ。
…眼鏡のお陰でか。
僕はサングラスを外した。
「痛てっ」
両のこめかみの辺りが痛んだ。指で触って確認すると、少量の血が付いていた。
金具に引っ掛けたのか?皮膚が少し裂けただけだと、気にも留めなかった。
それよりも、今まで僕の隣にいたあの娘が、スタスタと先に歩いて行ってしまった。
僕を置いて、振り向きもせずに。
「あ、あの…」
言葉にするのを止めて、そのまま見送った。
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