【一人目】空と地面はくっつかない

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過左原   お。心配してくれたんか? 見初   な訳ないでしょ。 過左原   だなぁ。 見初   ……。  ★交番の固定電話が鳴る。少し時間を置いて、過左原は面倒くさそうに受話器を取った。しばらく通話をした後、見初の方に目を向けた。 過左原   見初、今日はもう帰れ。 見初   やだ。 過左原   かーえーれ。仕事が入った。 見初   へぇ、めずらしい。 過左原   な。久しぶりだってのに、だいぶ緊急だから。 見初   うん、わかった。 過左原   お、おぉ。 見初   物分かりいいでしょ。 過左原   意外だ。 見初   見直した? 過左原   少しな。明日1巻持ってきてやるよ。 見初   なんの? 過左原   「エイトハーツ」だよっ。ぜってぇ面白いから! 見初   わかったわかったありがと。 過左原   ほら、出るぞ。鍵かけるから。 見初   え、それ持ってくの? 過左原   緊急だからな。 見初   気をつけて、ね。 過左原   心配してくれたんか? 見初   ちょーっとだけ。 過左原   安心しろ。お前こそ気をつけて帰れよ。 見初   うん。  ★拳銃を腰に据えた過左原はバイクに乗り街の方へと走り去って行く。どうやら近隣の交番全てに招集がかかっているようで、こんな地区の駐在にまで声がかかった。  その走り去る姿を見初は見えなくなるまで見送り続けていた。それを過左原もバックミラーで確認していた。 【2】人間は空間を潜行している  ★街は大騒ぎになっていた。阿鼻驚嘆の群衆は、激しく逃げ回っている人と、その場から動かない人とに二分されていた。 十五   世界はすべて固まるべきだ! いいかおまえたち、戦隊ヒーローは悪の組織と戦っている。世界征服を目論む悪の組織だ!      だが可怪しくないか? たとえ支配しても、感情までは支配できない。動きだって支配できない。      それは世界征服といえるのだろうか!      征服するならとことんやるべきだ! それをしないから奴らは負ける。正義はかならず勝つわけではない! 目的が浅いから負けるんだ。  ★動かない群衆の中で一人の男が叫び続け、動いていた。そこに一発の銃声が響いた。 この街の残っている警官の一人が発砲したのだった。銃弾はまっすぐ男を目掛けて飛んで いく。狙いは十分定めて、冷静に発砲したのだろう。  しかし、銃弾は男を貫かなかった。
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