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「……あの」
夜のレジ。
商品を置いたまま固まっているお客様へ、控えめに声をかけた。
そんなに悩み事があるのか、プリンを握ったまま考え込み、何度かため息までついていた。
今月限定の商品だから、買うかどうか悩んでいたんだろうか。
はっと上げた顔が、たちまち耳まで真っ赤になる。
よく、見かける、常連さんだ。
高校生にも見えるが、大学生だろう。
今日はバイト帰りらしく、いつも通りの周回をしている間じゅう、疲れた顔をしていた。
「何か……」
あったんですかと訊こうとした瞬間に、目が合った。
常連さんはあわてて代金を払い、逃げるように去っていった。
呆気にとられて見送ったが、小柄な背中は闇にまぎれてもう見えない。
少し、へこむ。
やはり俺の人相のせいだろうか。
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