フランケンナイト

5/22
前へ
/31ページ
次へ
  ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ 「……あの」  夜のレジ。  商品を置いたまま固まっているお客様へ、控えめに声をかけた。  そんなに悩み事があるのか、プリンを握ったまま考え込み、何度かため息までついていた。  今月限定の商品だから、買うかどうか悩んでいたんだろうか。  はっと上げた顔が、たちまち耳まで真っ赤になる。  よく、見かける、常連さんだ。  高校生にも見えるが、大学生だろう。  今日はバイト帰りらしく、いつも通りの周回をしている間じゅう、疲れた顔をしていた。 「何か……」  あったんですかと訊こうとした瞬間に、目が合った。  常連さんはあわてて代金を払い、逃げるように去っていった。  呆気にとられて見送ったが、小柄な背中は闇にまぎれてもう見えない。  少し、へこむ。  やはり俺の人相のせいだろうか。  
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加