5人が本棚に入れています
本棚に追加
眼鏡を外すのを見計らったように、にやにやと谷君がやってきた。
「逃げられましたね。やっぱ怖いんだ」
「君もたいがい酷いな」
見えない顔を睨む。
こっちのが確実に怖いだろうに、谷君の調子は軽い。
「御堂さんも言ってましたよ。だからあさって、呼ぶように言われてます」
眉間を揉む手が止まる。
どうやら、合コンにはこの子も行くらしい。
例の迷惑な友人は俺の同級生で、この子には高校の部活の先輩だ。
眼鏡をかけ直すと、何やら楽しそうな様子で俺を見ていた。
「……君、あいつに何か貰ってんのか」
「や、先輩の言うことは、きかないと」
「あれが先輩なら俺もそうなんだが」
「えー、店長は部が違うじゃないですかー」
とぼけながら、売場へ出ていく。
そして、いつもの時間でもないのに賞味期限のチェックを始めた。
仕事をしているならまあいい。
うつむきついでに、こちらもレジ資材の残量確認を始める。
慣れない合コンで、仕事場のバイト君と一緒。
何とも気が、進まない。
最初のコメントを投稿しよう!