第3章 スピーチ

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メガネの自分が嫌いだったけど、これは自分でも気に入っていること――。 友達からも褒められて、メガネの自分が少し好きになれたこと――。 今日はこれを着けて登校することが楽しかったこと――。 そんな話しをした。   「きっと選んでくれた人のセンスが良かったんだ思います」 藤川君に面と向かって、お礼が言えなかったから、この場を借りて言ってしまった。 普段だったら絶対に言えないだろう。 「はい、ありがとう」 担任の先生がそう言うと、教室にパチパチとまばらな拍手が響いた。 私はすぐさま教壇から離れたかったが、それは許されなかった。 スピーチの後、少しだけ先生の質問が入るのが恒例となっているのだ。 「ちなみにそのメガネは誰が選んでくれたの?」 先生の素朴な疑問だった。 まさか、クラスの藤川君に選んで貰いましたなんて、言えない。 明美にだって藤川君のことは何一つ教えていないのだ。 「誰?」 どうしよう――。 「家族?」 先生の追及に、少しパニックになった私は、 とんでもないことを思わず口走ってしまった。
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