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「……するから」
「え?」
私は顔を上げた。
藤川君の顔が思いの外、近くにあった。
これだけ近いと、いくら視力が悪くても、顔立ちが良く分かる。
恥ずかしさで、ちょっと泣きそうだった。
「緊張するから……」
私はまた目を伏せた。
「緊張すると外すって、何か関係あるの?」
「外すとね……」
自分の声が震えているのが良く分かった。
「外すと、視界がぼけて、夢見心地な感じになって、そんなに緊張しなくなるの……」
「へぇ、そんなもんなのかね」
「私、緊張しいだから」
藤川君は大きく息を吸い、そして吐いた。
「……。俺にもメガネあったらいいのにな」
「え?」
「俺、今、めっちゃ緊張してるから」
私は何も言えなかったし、顔を上げることができなかった。
「これから大事なこと言わなきゃいけないから」
藤川君の声も微かに震えていた。
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