眼鏡狩り

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「はい~、席に着け~。」 担任が教室に入ってきたので、皆ぞろぞろと各々の席についた。 「おっ、珍しいな。今日は、坂本が来てるのか。」 「来ちゃ悪いのかよ。」 俺が担任に悪態をつくと、担任のオヤジはがははとオヤジ丸出しの笑いを飛ばした。 「今日は転校生の紹介をするぞー。」 そう言うと、遠慮気味に小柄な少年が教室に入ってきた。その少年を見て、俺は思わず席を立った。 あいつだ。あの夢の中に出てきた、眼鏡。 「おっ、坂本、なんだ、お友達になりたいのかあ?じゃあ、ちょうど坂本の隣が空いてるから、席はそこな。」 クラスから笑いが起こった。 「竜崎 拓海くんだ。」 「よろしくお願いします。」  竜崎という少年は、俺の隣に座ると、眼鏡をずり上げて少し頭を下げた。 俺は無視しながらも、あの夢を思い出して、いやな汗が背中を伝った。 こんな偶然があるのだろうか。夢に出てきた少年と、全く同じ顔。同じ背格好。正夢というやつか。  相変わらず、吉良圭太とその仲間達の行方は知れなかった。同じ中学の中学生が一度に三人も行方不明になったということで、またもやマスコミをにぎわせていた。俺は、正直ほっとしていた。もうあのバカから召集がかかることはないのだ。俺だって好きで、こんな位置に居るわけではない。本当は、皆と一緒に平凡な中学生活を送りたかったのだ。それを、あの圭太のバカに勝手に仲間に引き入れられて迷惑をしていたのだ。 「坂本君、一緒にご飯でも食べない?」 ある日、今まで隣の席にも関わらず、ほぼ交流のなかった竜崎から誘いがかかった時は驚いた。 俺たちの中学校は学食があり、そこで食事をするようになっているのだ。 俺が無視していると、竜崎は勝手に俺の前の席を陣取った。周りは奇異な目で竜崎を見ている。 俺はなおも無視して、スマホに目を走らせていた。 「謎の失踪事件がこの街で立て続けに起こっていますが」 その問いに、主婦が答えていた。 俺は、スマホにヘッドホンを繋ぎ、ネットのニュース動画に見入っていたのだ。 「そうなのよ、何だか怖いわよねえ。それより、うちのシロちゃんが行方不明になっちゃったの。ペットもこの界隈でたくさん行方不明になってるのよ。」 そういえば、人間ばかりでなく、行方不明はペットにも及んでいると、別のニュースで聞いたことがある。
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