いまだかつてない最弱の安倍

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 体の怪我もなかなか大きかったが、何よりも大きな術を連発した上に術を無理やり破られたせいで力の消耗が激しい。あと2、3日は臥せっている。  震えるだけで何の反応も見せないキツネに、晴雅はつかんでいる顎から手を離し手品のようにどこからともなく紙切れを出すと振った。  紙きれは1匹の狐に変わり、両手で持っている鏡をキツネに向けた。その鏡には、別室で寝ている和比呂が映っていた。  和比呂のそばにも、常に晴雅の狐がついている。点滴をされながら青い顔の和比呂は、死んでいるように眠っている。 「な、んで……僕が……そんな、でも…………いつも、朝目が覚めたら血まみれで、怖かった……それが……」 「ふぅん、なんとなくはわかってたんだ?でも良かったね、まだヒトを食ってはいないよ。ヒトを食らえば堕ちて、二度と今のコンコンには戻れなくなるからね。私様達に退治、殺されるしかなくなる」 「そんなの嫌だ、僕は人間が大好きなのじゃ!安倍って陰陽師のお偉い人なんじゃろ?僕を助けてよ!何でもするから、お願いだから…………じゃないと僕、旦那を探せなくなる……う、あっ!?」  瞬間、キツネの背中が壁に叩きつけられた。ドンッ!と、晴雅が首をつかんで体当たりしてきたのだ。口元に笑みを浮かべて。 「それ。原因はコンコンが惰眠童子に執着しすぎていることだよ。君はただの妖孤じゃない。惰眠童子に憑いていた、名前を与えられた眷属だ」
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