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「はいはいそこまでー。秋月の和君、できもしないことを1人で背負うのは愚か者のすることだよ。それとも君、友達に食われて死にたかったのかい?」
結論、和比呂は死ななかった。
死を受け入れようとしていた彼を乱暴に蹴り飛ばして、身代わりに青い炎に呑まれ黒焦げになったのは1人の屈強そうな大男。
消し炭になって消えた。人間ではない。この男もまた、和比呂が使っていたような式神のようだ。
重症の和比呂は容赦なく蹴り飛ばされ地面を転がり、激しく咳き込む。口元を真っ赤に濡らしながらもなんとか起き上がれば、目の前には黒い化け狐を取り囲む無数の狐達。
純白の狐。ボウッと淡く発光しているあたり、これも式神か何かか。
さきほどの緊張感のない声の主。大男と純白の狐を操っている術者が、ポカンとアホ面をさらしている和比呂の頭を古風な扇子で叩いた。
「餅は餅屋、キツネ退治は狐憑きが引き受けよう。…………大丈夫か?」
「いてっ。あ……え、う、嘘ぉっ!?あ、あ、あ、あ、安倍様っ!?」
「あぁ、そんなに恐縮しないで。とりあえずこの暴れん坊は私様の優秀な下僕が、ミッチリ痛めつけ……灸をすえてから拘束するから」
現れたのは術者だけではない。倒れた大木の奥から仕事着に身を包んだ影の者が数名、淡く光る狐達の猛攻に加勢。
男に「優秀な下僕」呼ばわりされた影の者達はそれぞれ、思い思いに攻撃を開始。
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