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「秋月の和君の手には負えない、身をもってわかったでしょ?友達だからなんてくだらない理由で君に任せていたら君も、多くの人間も死ぬよ」
「っ……でも、こいつはただ蒼輝さん、惰眠童子を――」
「くどいなぁ。惰眠童子と酒呑童子の事情も私様にはわかってるよ。だーいじょうぶ、殺しはしない。もう2度と人間を手にかけないよう元に戻すから、私様に任せなさい?」
立っているのもやっとの和比呂は手を伸ばすが、触れる直前に晴雅がキツネをかごの中に入れてしまった。
悔しそうにうつむく和比呂の頭を、また扇子で叩いた。晴雅には惰眠童子の事情が、朝霧神那の件も含めて全てわかっている。
陰陽師のトップだから。そのトップが直々に、退治しなければならないところまで来てしまっているキツネを生かし、しかも元に戻すと言っているのだ。
もう、和比呂の力ではどうにもできない。死ぬところだった。あれはもはや、和比呂が知っているキツネではない。わかっている、だから。
「…………お願いいたします。申し訳ありません。…………ごめんな、孤吉」
そう言うしかなかった。深々と頭を下げた和比呂が顔を上げると、そこにいるはずの晴雅の姿はない。も、もう帰ったのか。
どうやら晴雅はキツネを持ち帰ったらしい。どうやって元に戻すのか、和比呂には見当もつかないが。心配だ。
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