いまだかつてない最弱の安倍

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 ――安倍の屋敷内、晴雅の部屋。ではなく、小さな離れにて。すごい!晴雅は睡魔と戦いながらもちゃんと起きていた。  鉄かごの中で眠るキツネを前にうつ伏せに寝転び、子供のように足を曲げたり伸ばしたり、いろんな角度からジィーっと見つめる。  夏休みに獲った昆虫を前に興味津々に観察する幼い男の子のようだ。これでも晴雅は27歳、小さい子供に「オッサン」呼ばわりされしてしまう年齢だが。  そんな見た目だけは大人の晴雅の熱すぎる視線で、キツネがようやく目を覚ましたようだ。 「あ、起きたっ!おはよ、コンコン。気分はどうだい?」  キツネ、超ビックリ。白い狐の姿で「え?」と、赤いクリクリの瞳を大きく開いて固まってしまった。顔には「誰!?」と書いている。 「あれ、一瞬ではく製にでもなっちゃった?あぁ、今ヒトの姿になっちゃったらちょっと苦しいことになるからそのままで」 「こ、コンコンってもしかして僕のことじゃろうか?なんかすごい体が痛くて重いし苦しいし。……ここはどこなのじゃ?誰なのじゃ?一体、何がどうなって……」  大人の狐よりも若干大きな白い狐。狭い鉄かごの中で身じろぎ、一旦は立ち上がったが倦怠感に伏せる。 「この部屋には強力な結界が張られていてね、コンコンみたいに凶暴な妖を閉じ込めておけるようになっているんだよ。残念ながら、私様じゃなくて先代が作った結界だけど」
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