熱情

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「狐憑きって、そういうことだったんじゃな」  晴雅の体を包んでいた淡い光が消えると、彼の姿は変わっていた。人間の耳が消え、頭の上で茶色い狐の耳がピョコピョコ。腰の下からも同じ色の尻尾が揺れている。 「すごい先祖返りでしょ?人間にも狐にもなりきれない、中途半端な……」 「なんか、すっごく可愛い。おいなりさんみたいで美味しそう。僕の毛色は白だから、こっちの方が綺麗だなぁ」 「お、おいなりさんっ!?やぁっ!俺、狐の部分は敏感だから、っ……み、耳を食べないでぇ……っ」  元々は狐で人間として生きているキツネと、元々は人間なのに狐でもある晴雅。何ともまぁ、よく似ている。  この妖孤としての力が、晴雅には陰陽師の力の代用になっている。式神を操るのだって、この力を陰陽師風にアレンジしたものだ。  本当はもっと色んなこともできるし、頭も悪くはないのだから今いる陰陽師の中でも上位。本気を出せば本当の意味で頂点に君臨するほどの力がある。  能ある鷹は爪を隠す、というのか。もしかしたら晴雅はその境遇を嫌い、周りに嫌われることで家から出ようとしているのかもしれないな。  なんて、キツネが思ったのはほんの一瞬だけ。今はもうそれどころではないようだ。  確かに言われてみれば美味しそうないなり寿司色をしているが、だからっていきなりパクッと食むか。キツネだって耳と尻尾は弱いのだからわかるはずなのに。
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