仲人

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 野々宮野乃が示す特異性に興味を惹かれたため、機会を見つけては彼女の横顔を眺めるようになった。  庄司翔也は長らくの間そう考えてきたが、ある時不意に、それは誤りだと気がついた。  庄司翔也と同年代の人間の感覚からすれば、自席に凝然と座り、自らの机の天板を凝視するという休み時間の過ごし方は、特異以外の何物でもない。彼くらいの年頃の人間は、自らが属する集団内において特異性を示す者を発見した場合、仲間と徒党を組んでその特異性をあげつらい、その者を迫害する傾向にある。クラスメイトが誰一人としてそうしないのは、彼らが未だに彼女の特異性を発見していないことを意味していた。  換言するならば、並大抵の人間が造作なく発見できるほど、野々宮野乃が示す特異性は分かり易いものではない、ということだ。  その決して分かり易くはない野々宮野乃の特異性を、庄司翔也は発見した。彼は並外れた観察眼の持ち主ではないし、彼と同程度に彼女と席が近い生徒ならば他にも数人いる。にもかかわらず、何故なのか?  順序が逆だったのだ。野々宮野乃が示す特異性に興味を惹かれたために彼女に注目し始めたのではなく、彼女に注目し続けたからこそ彼女が示す特異性を発見できたのだ。  では、何がきっかけで野々宮野乃に注目し始めたのか?  その答えは、幾ら思案しても見出せなかった。
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