星々の行方

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「何時までそれをかけているつもりだ?」 一人の青年は訊ねた。 「さぁ…。」 少し寂しげに応えたのは眼鏡をかけた女性だった。 彼女がかけている眼鏡は、普通の眼鏡じゃない。 何故なら、今彼女が視ている景色と実際の景色はまったく違うものだからだ。 青年は質問を変えた。 「何時まで…此処に居るつもりだ?」 眼鏡をかけていない青年の瞳に映っているのは、ただ、何もない荒野という現実だった。 たった1つの間違いで、この星は全て滅びてしまったのだ。 彼女の瞳には、かつての美しかった景色が映っている。 どうして、駄目だったのだろうか。 その景色を美しいと想っていた者は沢山いた筈なのに。 それを壊し、棄ててまで、人々は何を求めていたのだろうか。 佇む二人は出来うる限りを尽くし、伝えたのに、その声は届かなかった。 しかし、珍しい事ではないのだ。 もう、幾つもの星で二人はそれを知っている。 残っている星は、あとどれくらいだろうか。 一通り星を廻り終えると、女性は眼鏡を外した。 そして、持っていた本の中にその星を閉じ込め、また別の星へと旅立った。 次に行く星は、どれくらい保つだろうか。 そして、あとどれくらい繰り返すのだろうか。 ただ、二人の終らない旅に、悲しみが少なくなることを願う。 私は、遥か遠い宇宙に在る。 夢という映像で、その姿を見護り続けている。 何時か、君達が行く星が優しいものであるように。 私の創った幾つもの、 世界のどれか、1つでも…。
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