メガネ☆彼女

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 そして、定時。  言われた通りに菊川さんよりも先に会社を出て、駅前のコンビニで待つ事30分。  ガーッと扉が開いて、菊川さんがツカツカと店内へ入って来た。 「お待たせ。で、どうすればいいの?」 「えーと、じゃあどっか茶店にでも入ろっか」  俺達はなるべく会社の人間が立ち寄りそうにない店をチョイスして、そこへ腰を落ち着けた。 「さて、議題は何なの?」 「議題って……じゃあ議題は『メガネ』って事で」  彼女の眉がピクリと反応した。 「やっぱりそこへ行ってしまうのね」 「だって気になるでしょ。メガネがある時無い時であの変わりようは」 「そうね、そうかもしれないわ」  そうして菊川さんは覚悟を決めたように淡々と話し始めた。 「私、本当は凄く気が弱くて消極的な性格なの。それと正反対だったのが私の母。でも母は私の高校進学が決まってすぐに急死してしまった」  いきなりのヘビーな内容に、俺は押し黙ってしまった。 「このメガネは母の遺品として私が受け継いだ物。それを私は何の気なしに掛けてみたわ。そうしたら……みるみる自信が湧いて来て、私は母の死から立ち直る事が出来たの。それからはこのメガネが手離せなくなってしまって、メガネを外した途端にあの様よ」 「え、じゃあ何? 今までもずっとそのメガネのお陰でやってきたって事? 家でもずっと掛けたままだったりする訳? 髪型もそのまま?」 「そんな事はないわ、家では取ってるわよ。髪だって下ろすし、ずっとこのままじゃ流石に疲れちゃうから」 「ふーん……じゃあさ、もっとリラックス出来る時間を増やしてみない?」  彼女は不思議そうに首を捻った。
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