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「どう言う事?」
少々回りくどかったか? 俺は単刀直入にこう言い直した。
「俺と付き合って。でもって俺の前でだけはメガネを取ってよ」
「…………」
彼女は無言のまま固まってしまった。
あまりにも固まっている時間が長い為、俺は思わず声を掛けた。
「あの、大丈夫?」
「え? ええ……ごめんなさい。初めてだわ、このメガネを掛けていても動揺する事があるのね……」
そんな事を言いながら、カタカタと震える手でコーヒーカップを口へと運ぶ。
メガネを掛けている時の自分には余程の自信があったのか。
「じゃあ今までに告白された事は?」
「無いわ。メガネを付ける前まではイジイジして暗かったし、メガネを付けるようになってからもツンツンしてて嫌な感じだなんて言われているし」
確かに、藤原もそう言っていた。
片方の彼女しか見ていない奴らからすれば、そうかもしれない。
けれど、その両方を見てしまった瞬間に、おれはこのギャップに惹かれてしまったんだ。
「で、どうなの? 俺と付き合ってくれる?」
彼女は「ぶっ!」とコーヒーを吹き出した。
「ご、ごめんなさい! そ、その件に関しては……取り敢えず持ち帰って、また……後日」
一応考えてくれるって事? ならまだ望みはある訳だ。
「分かりました。では、良い返答をお待ちしております」
俺の方も仰々しくそう答えて、その日はそのまま別れた。
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