1 白バイ隊員の章

1/18
2274人が本棚に入れています
本棚に追加
/311ページ

1 白バイ隊員の章

1.  春のうららかな陽射しを浴び、思わず目を閉じそうになった。  柔らかで優雅な香りが鼻につく。安西弘明巡査部長 30歳は思わず視線を上に上げた。赤羽台さくら並木公園 の前の道路沿いには、桜のトンネルが出来ていた。この 桜並木は700m続き、百十本の桜が植えられている。 (綺麗だなぁ)  思わずハンドルを緩めそうになるがそうもいかない。  安西は警視庁、第九点五方面交通機動隊所属の 交通機動隊員だ。いわゆる世間から『白バイ隊員』 と呼ばれている。  分駐所は赤羽台四丁目にあった。主に板橋区と北区を 担当している。  ホンダCB1300Pで走行していると、 車は安西の姿を見るなり、速度を緩めながら運転する。  すれ違う車は怯えながらハンドルを握り、 安西の方を一瞥してから通り過ぎる。 (そんなに白バイが怖いかね)  安西は少し残念な気持ちになりながら、 続けてバイクを走行させた。諏訪神社を通りすぎ 次の角を右折すると、環八通りに出た。image=504301088.jpg
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!