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1 白バイ隊員の章
1.
春のうららかな陽射しを浴び、思わず目を閉じそうになった。
柔らかで優雅な香りが鼻につく。安西弘明巡査部長
30歳は思わず視線を上に上げた。赤羽台さくら並木公園
の前の道路沿いには、桜のトンネルが出来ていた。この
桜並木は700m続き、百十本の桜が植えられている。
(綺麗だなぁ)
思わずハンドルを緩めそうになるがそうもいかない。
安西は警視庁、第九点五方面交通機動隊所属の
交通機動隊員だ。いわゆる世間から『白バイ隊員』
と呼ばれている。
分駐所は赤羽台四丁目にあった。主に板橋区と北区を
担当している。
ホンダCB1300Pで走行していると、
車は安西の姿を見るなり、速度を緩めながら運転する。
すれ違う車は怯えながらハンドルを握り、
安西の方を一瞥してから通り過ぎる。
(そんなに白バイが怖いかね)
安西は少し残念な気持ちになりながら、
続けてバイクを走行させた。諏訪神社を通りすぎ
次の角を右折すると、環八通りに出た。
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