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「美穂ちゃん。啓って呼んでくれても、構わないんだよ?」
「まずは否定しろ。でないと疑いが濃くなるぞ」
半目でバカ(啓)にツッコむ。
紫紅美に心配の目を向けられていた寒菜は、首を横に振った後、幸せそうな笑顔で、口を開いた。
「……美穂。美穂が、雅文好きになったの……分かった……雅文、とてもいい人……!」
「か、寒菜。お前喋っ……って、ええ!?か、寒菜!お前も雅文くんのこと好きになってしまったのか!?だ、ダメだぞ!雅文くんは、私が好きなのだーー!!」
唐突な告白が紫紅美の口から飛び出し、行き交う人々が数人、足を止める。
あら、往来の場で告白?若いっていいわねぇ。みたいなひそひそ話が聞こえてくる。
「いやー、雅文、羨ましいですなあ。こんな公衆の面前で告白されるとは。こりゃ、きちんと応えてやらないとねっ☆」
ねちっこく耳打ちしてくる啓。そんな啓の言葉を完全無視し、一切感情を込めていない声で、俺はみんなに告げた。
「ハヤクツギイコウ」
なお、紫紅美の誤解が解けるまで数時間かかったことを、ここに記しておく。
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