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雑談をしながらも、着々と帰り道を歩む俺達。やがて分かれ道に差し掛かると、寒菜が口を開いた。
「……私、こっちだから……またね」
「こんな暗い道を、レディーに一人で帰らせる訳にはいかないね。付き合うよ、寒菜ちゃん」
「……ありがとう」
「待て、啓。俺から一つ言いたい」
「私からも言おう。恐らく雅文くんと考えてる事は同じだ」
俺達は互いに顔を合わせ、声を揃えて言った。
「「何もするなよ」」
「ふっ、信用ないなぁ。ボクは仮にも紳士だよ?何かする訳ないじゃないか」
「お前が変態という名の紳士だから言ってんだよ」
「安心したまへ。君の親友は、女性が傷つく事をしない男さ☆」
「参ったな。俺、お前を親友として見てないんだが」
「まっ、寒菜ちゃんはボクに任せて、君は美穂ちゃんとして語らいたまへ。愛を深めちゃったりしても、いいんだよ?」
「深めるとしたら親睦だな」
「では、アデュー!」
「……ばいばーい」
啓と寒菜が手を振り別れを告げる。二人が暗闇に消えた頃ぐらいに、紫紅美が不安そうに言う。
「……本当に、大丈夫なんだろうか?」
「なんだかんだでアイツ、ウブだから大丈夫だろ。女性と手を繋ぐだけでキョドる、なんちゃってナンパ野郎だから」
「俄には信じがたいが……雅文くんがそう言うのなら大丈夫なのだろうな。よし、私たちも帰るとしよう」
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