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どちらからともなく、再び歩き始める。騒がしいバカがいないからか大分静かだが、こんな静けさも悪くない。
「……雅文くんは」
紫紅美が口火を切る。静寂に耐えられなくなったのか、はたまた話したかったのか。恐らく、後者だろう。
「雅文くんは、その……今日は、楽しかったか?」
「さっき、楽しかったと言ったはずだが……?」
「ああ、いや。気を悪くしたのならすまない。ただ……本当に、心の底からそう思ってくれているのだろうか、と不安に思ってしまってな」
悲しく笑みを浮かべる紫紅美。
「私は普段、こんな風に遊ぶことは少ない。苦には思ってないが、基本的には集会や生徒会の集まりがある。そうでなくても、私には気軽に遊べる友人がいないのだ」
「……前の舎弟みたいなやつとか、寒菜は?」
「玲奈のことか。やつは私を立てよう立てようとしてしまうから、気軽に、しかも共に遊んでいるような気がしなくてな。その点寒菜とは旧知の間柄だが、前にからかわれたのが余程イヤだったんだろう。あまり人がいる所に行きたがらない。だから今回は珍しかったのだ。……一見、人に囲まれているような私だが、気軽に遊べる人となるとな……」
紫紅美……。
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