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「だから、不安に思ってしまったのだ。私と遊んで本当に楽しかったのだろうか、と。友人として、楽しんでくれただろうか、と……」
徐々に顔を曇らせていく紫紅美。
「……分かった。ちゃんとはっきり言ってやる。紫紅美」
「…………」
「楽しかった」
「えっ?」
本当に?みたいなリアクションをする紫紅美。……紫紅美は心配性なんだな。極度で敏感な程に。繊細とも言い換えられるかもしれない。
まあ、それはともかくとして、続けようか。
「凄く楽しかった。俺もそんなに友人がいないからな。放課後なんて家に帰って寝るって感じなんだ。だから……お前のおかげで、青春ってやつを、ちゃんと謳歌してる気がする。そんなお前がそんな暗い顔しないでくれ。な?」
「……ふぇ」
若干小っ恥ずかしいセリフを並べると、紫紅美の眦に涙が溜まりだしていた。
「ま、待て、紫紅美。落ち着け。落ち着いて涙を拭くんだ。その溢れ出しそうな雫を引っ込めるんだ。な?」
間違いなく、紫紅美がここで泣き出したら面倒な事になる!
だが、そんな俺の思いとは裏腹に紫紅美は涙を一つ二つとこぼしていく。
「ま、雅文くん。や、やひゃり、ひっく、君は優しいひっく。そ、そんな温かい言葉を……!」
「頼む、俺の話聞いて!」
完全に泣き崩れる紫紅美。
大泣きしてるその声に釣られて人垣があっという間に形成され、やがて侮蔑の視線が向けられ始める。
……うん、俺の青春、ここまでかな。
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