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「…………」
知らない知らない。鳴神なんて俺、知らない。
現実逃避もむなしく、赤髪ツインテは俺を見つけ、ずかずかと俺の前までやって来た。
「姉御泣かすなって、ウチ言ったっすよねぇ?その約束してから何日っすかぁ?バカなんすか?バカなんすよねぇ!?……とりあえず屋上来いやぁぁ!!」
「……ダメ元で言う。俺の話を」
「屋上来いやぁぁ!!」
もうヤダこの人。
困り果ててるところに、慌てて駆け込んでくる人の姿。
「玲奈!ようやく見つけた!!」
肩で息をしながら、駆け寄ってくるは紫紅美。待ちに待った救世主だ。
「あ、姉御!……いくら姉御の頼みでも、ウチたちはこの男を許せないっす!姉御を泣かせるやつなんざ、この世に一辺の肉片も残したらダメっす!」
「話を聞け!私は彼に泣かされたのではなくてだなーー!!」
懇々と、ツインテが理解できるまで丁寧に説明する紫紅美。
騒ぐツインテに対抗するためか、その声は自然と大きく、教室内に紫紅美の説明が響き渡り、そのおかげで誤解が解けたらしく、クラスメート達の視線が和らいだ。
「ごめんな、鳴神。勘違いだったようだわ」
「ご、ごめんねっ、鳴神くん!私たちの早とちりでーー!」
数名が丁寧にも謝罪に来てくれる。……うん。折れそうだった俺のメンタルは回復のサイクルに入ったようだ。
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