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 アドラマリクは見たこともないような苦い顔をして、それを呆然と見つめていた。 「甘いねえ。こんなものでボクが消せるとでも思ったってわけ? いつも使ってる時空転送用の麻袋に、まさかボクを放り込もうとするなんてね」 「いい加減、縁もゆかりもない人を古代文明の生贄として送り込むのはやめにしませんか、マスター」 「ま、マスターって」 「新田有登はサモナーで、私のマスターです。ただし、アルトの『1方の人格』のみと付け加えておきましょう」 「縁もゆかりもないわけじゃないといつも言ってるよね? いろいろいるんだよ、邪魔なやつが。で、今日からお前もその1人だ」 「私は悪魔ですから、生贄にはなれませんよ」 「でも、ボクの命令には逆らえない」 「それは、どうでしょう? レラジェ、アルトの体を押さえてください!」 「ら、らら~じゃ!」  突然白羽の矢が立てられたレラジェは有登の背後にすばやく回りこみ、羽交い絞めの恰好になった。 「何する気だ……」  アドラマリクは近くでわたわたしているロノウェの瓶底メガネをがしっと握りしめ、奪い取った。  そして、そのまま有登の顔の前に向ける。 「あれ、これ取れないんじゃ……なかったんですね」 「や、やめろ。アドラマリク……」 「もう一方の人格に戻りなさい」  瓶底メガネが目元にはめられ、同時に有登が叫び声をあげる。 「なんだこれええええ! ぐるっぐるで気持ち悪いんですけどおおおおお!!」  ひとしきり叫んだ後、脱力してがっくりと項垂れる有登をレラジェが支えた。 「大丈夫かしらら~、アルト」 「マスターの人格はこれで当分はおとなしくしていてくれるはずです。目が覚めたときはメガネのアルトだと思いますよ」 「あの、先生、これはどういうことで?」 「あなたたちを騙す形になってしまったことは謝ります。でもこの方法が思いつかなかったのです」 「アルトに一体何が起こってるる~?」
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