3人が本棚に入れています
本棚に追加
「新田有登には2つの人格が宿っています。少し気弱な普通の高校生と極端にエゴイスティックな悪魔召喚士(サモナー)、それはメガネというアイテムで区別されていたんです」
「それで、サモナーのほうは先生のマスターだったと……」
「しかし私はその自分勝手な依頼に数々に耐え切れず、アルトを同じ目に合わせてやることを決意しました。でも、メガネをつけたままのアルトを麻袋に放り込むことは、どうしてもできなかったんです。彼には何の罪もありませんからね」
その師の言葉にレラジェとロノウェは軽く微笑んだ。
「先生、それはしょうがないし。それでいいと思うし! でも卒業最終試験はやり直しをお願いするる~」
「アルトはどうするんですか」
「しばらくはメガネをかけ続けたほうがいいでしょう。目が覚めたら3人でメガネ量販店に行ってきてください。あ、そうだお金も少し置いていきましょう」
「えっ、まだ人間界(こっち)に居残りり~?」
「すみませんが、もう少しアルトの傍にいてあげてください。目覚めたら事情も聞きたがるでしょうし、あなた方の知る範囲で説明してあげてください」
「先生はアルトと話さないんですか」
「今は私を目に映さないほうがいいでしょう。とはいえ、いずれまたサモナー人格をどうするか、アルトと相談しなければならないでしょうけどね」
そう言いながら、アドラマリクはゆっくりと目を閉じて向かい合わせた掌から光の珠を作り出した。
「それでは、私は帰ります。あとはよろしくお願いしますね」
「ピンチそうだったら、また来てくださいね」
「気を付けるる~」
「ありがとうございます。あなたたちこそ、気を付けて。そぉれぇ!」
そのまま光がスパークして、空気に溶けるように消えていった。
それを見届けたとき、レラジェが支えていた有登の体がぴくっと動く。
そしてゆっくりと目を開ける、というか瓶底のせいでよく見えないが開けているだろうと思われた。
「ん、あれ? 僕は……。てか、ぜんっぜん何も見えないんですけど……」
最初のコメントを投稿しよう!