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 困惑の色を隠さず不満気な2人の前に、アドラマリクは1本のクジャクの羽を取り出して見せた。  そしてもう一方の手を軽くそれにかざすと、クジャクの羽は音もなく榛色の大きな麻袋に変化した。  それを無理矢理ロノウェの手に握らせる。 「新田有登がメガネを外したら、どちらでもかまいません、この麻袋を頭から被せてください。それであなた方のミッションはコンプリートです」 「そ、それって……」 「もうお話はいいでしょう。とにかく人間になって旅立つのです。人間への変化の術は私がかけてあげましょう。……そぉれぇ!」  アドラマリクは言葉が終わらないうちに両掌を上に向け光の珠を作り出す。  ある程度の大きさになったそれを、2人に向けて解き放った。 「先生、ちょ、まっ!」 「わああああー!!」  光が収まった場所には、新たに人間が2体現れた。  レラジェがいた場所には、背中まで伸びたストレートの黒髪を後ろで1つに束ね、気が強そうな瞳を持つ美少女の姿があった。手には何故か弓矢をもっている。 「あれれ~。なんか女の子になってるる~」 「弓矢はいらないから、置いていきなさい」  そしてロノウェはと言うと、瓶底のようなメガネに真っ黒い学ラン、中途半端に伸びた髪を七三分けにしたどう見ても不本意な姿だった。ついでにラテン語の分厚い辞典を小脇に抱えている。 「あ、あの……、先生? これは一体どういうことで?」 「あなた方の魂を人間として具現化したらこうなる、ということです。ちなみにその瓶底メガネは、あなたの顔の一部ですから取れませんよ」 「ええっ! そんな馬鹿なことが……。っていうか、そもそも論、時代錯誤にもほどがありませんかね、これ」  ロノウェは、ふふんと得意げに笑うレラジェと自分の姿を見比べながら、盛大なため息をついた。 「めんどくさいやつ。とっとと現実を受け入れるる~」 「お前、ほんっとに腹立つね。なんかいろいろと、世の中って不条理すぎる気がするんですけど」
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