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「あ、えーっと。ひかりり~? あー、そうだったかもしれないし……」
レラジェは突然表れたターゲットの姿に、あたふたしつつ適当に取り繕う。
頭の中では必死に次の一手、そのまた先の一手でメガネを外させる方向に持っていこうと考えを巡らせていた。
「そんなわけないよね、変なこと言ってごめんなさい」
「あなたはアルトさんで合ってるる~?」
「どうして、僕の名前を? 君は誰?」
「あ、私はレラ……、そう、レラら~」
「レララ、さん? い、いい名前だね」
有登が少しペースを崩したようで、逆にレラジェの気分が楽になる。
準備だの作戦だの回り道したがるロノウェを出し抜くために、スタートダッシュを決めようとレラジェは1人で軽くうなずいた。
とりあえず手っ取り早く、メガネを外させるために利用できるものは……。
公園内を見渡すと、近くに直径が3メートルほどの小さいの噴水が目についた。
がしっと有登の腕をつかみ、その場所までぐいぐいと引っ張っていく。
「あの、レララさん?」
「噴水あるる~。アルトと水遊びしたいし!」
レラジェは、噴水の脇から手を伸ばし、軽く水を掌にすくいあげた。
それを有登の顔、というよりメガネに向かって投げつけた。
わあ、と声を上げて、有登は両腕でそれを回避する。
2度、3度とレラジェはたて続けに水しぶきをメガネに向けて放つものの、その度に有登の腕が俊敏に動きメガネを守った。
「れ、レララさん! メガネにかかっちゃうよ」
そりゃそうだし!と心の中で叫びつつ半ばムキになって水をかけ続け、気が付くと有登は全身びしょ濡れになっていた。
あくまでも、メガネ以外。
有登のくしゃみでレラジェはハッとなり、自分のポケットからハンカチを取り出した。
「ごめんなさい。つい夢中になってしまったし……」
「っくしゅ! だ、大丈夫。レララさんが楽しかったならそれで」
髪の毛や肩にハンカチを当てながら、レラジェは至近距離で有登のメガネを見る。
水滴ひとつついてないそれにハンカチを持っていこうとすると、やんわりと手で遮られてしまった。
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