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「あ、ありがと。天気もいいしすぐに乾くよ」 「メガネも拭かないとだからら~」  水がダメなら指紋でもべっとりつけてやろうと、今度はレンズに指を伸ばす。  しかし、有登のディフェンスは強固で手首のスナップを巧みに利かせ、レラジェの指先の方向をバシバシと変えていた。  しびれを切らしたレラジェが力づくでメガネを外そうとするも、その手をがっしりつかまれてしまった。もう片方も同様に。 「……だ、大丈夫。レララさんは優しいんだね」  両方の腕をつかまれ、顔と顔が間近で向かい合う形になる。  それでもレラジェは諦めなかった。  大きく息を吸い込み、溜め込んだ吐息をハアと思い切りメガネに向けて吐き出す。 「うっ……」  さすがの有登もこれは不意打ちだったようで、一瞬眉を寄せた。  しかしレンズは一瞬だけ白く曇ったものの、あっという間に透明に戻る。  それを見たレラジェは、がっくりと肩を落として俯いてしまった。  その時、先ほど出て行った公園の入り口からロノウェが戻ってきた。  両手をつかまれて項垂れているレラジェが目に入る。  よく見ればレラジェを抑えているのは他ならぬ新田有登だったので、ロノウェは驚いて2人に駆け寄った。 「お、おい、そいつを離せ!」  ガンを飛ばしながらすごすごと出ていったつもりだったが、ロノウェの特異な出で立ちのせいか有登は柔らかく笑い、すぐにレラジェを開放した。 「ごめんなさい、そんなつもりはなかったんです」  レラジェは涙目で手首を軽くさすりながら、ロノウェを見上げてくる。  その様子から首尾が芳しくないことが見て取れた。 「あ、いや、これは大変失礼いたしました。私は『ロノ』と申します。以後、お見知りおきください」 「ロノ、さん。ご丁寧にありがとうございます。僕は有登です」  ロノという名前とすでに絶滅危惧種であるガリ勉モードとのギャップに、必死で笑いをこらえているように見える。  そんな有登の態度に若干ムッとしつつ、ロノウェは自分が考えた「メガネ外し作戦」を展開し始めた。 「アルトさんはこんな話、ご存じですか。この世のどこかに『ソロモン王のメガネ』が存在するって」
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