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「えっ、ソロモン王って指輪じゃなかった!?」
「そうです、でも高名な指輪とは全く別のものなんです。そのメガネは視力が低下してきたソロモン王のために用意されたのですが、彼に使役されていた悪魔たちの魔力がたくさん詰まっているものらしくて」
「なにそれれ~! ちょっとそんなの聞いたことないし!」
横から口を挟んでくるレラジェの頭をバシッと後ろから叩き、ロノウェは続ける。
「私はそれをずっと調査してきたのですが、どうやらソロモン王のメガネは、ここ、日本にあるらしいのです」
「な、なんで日本に?」
「どういう経緯かはわかりません。ですが日本、そしてこの街の高校生の手に現在渡っているところまで突き止めました。そして今まさに確信しています。ソロモン王のメガネは、あなたがかけているものだと!」
「ちょっと、待って! そんなこと絶対あるわけないよ!」
「なぜそう言えるんです?」
「だってこれ、2年くらい前にメガネ量販店で買った、レンズ込み8,000円ちょっとのプチプラアイテムだよ?」
「きっと何か運命のいたずらで店頭に並び、あなたの手元にやってきたのでしょう」
「いやー、どう考えても工場で量産されたものの1つに見えるけどなあ……」
「じゃあ、私に見せてください。きっとソロモン王の秘密を解き明かすための研究に役立てます」
「それはできないよ。今はこのメガネしかないし、取ったら見えなくなっちゃうからね」
「大丈夫、一旦はすぐにお返しします。なので、外して見せてください、さあ」
ロノウェが有登に向かってすっと手を差し出す。
2人の間の空気がぴんと張りつめいたまま、しばらく時が流れた。
「……ロノさんもレララさんも、どうやら僕のメガネに興味があるみたい」
有登は急に真面目な表情になり、虚空を見つめた。
「でもね、僕はメガネを外すことはできないんだ」
「どうしてですか?」
「記憶が、なくなるから」
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