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案外あっさりと理由を打ち明けてくれた有登に、2人はいろんな意味で驚き息を飲んだ。
「僕はここ1年ほど、メガネを外したときの記憶がなくてね、それがちょっと怖いから基本的に外さないことにしてるんだ」
「記憶がないってどういう?」
「わからない。家族や友達に聞いても変わったところもなくて、今のところは周りに迷惑かけたりはしてないんだけど。それでもなんだか怖くてね」
「それはたしかに怖い気がするる~」
有登は少し考えているような様子だったが、大きく一度息を吐いてレラジェとロノウェを交互に見つめた。
「メガネ外してあげるよ。ただし、その間僕がどうなってるかをちゃんと見ててほしいんだ。これに録画してもいいから」
そういってお尻のポケットからスマホを取り出し、レラジェに手渡す。
手のひらサイズのそれに目を落とし、有登にうなずいて見せた。
「じゃあ、行くよ」
ごくっと息を飲む2人。
レラジェはスマホのカメラアプリを起動させ、有登のバストアップが収まる程度の位置から録画を始めた。
有登が右手でメガネの弦をつかみ、すっと斜め前下方向に引いた。
「今です! ロノウェ、麻袋を!」
突然、どこからから聞き覚えのある声が。
振り返りながら、ロノウェは反射的にカバンの中の麻袋を取り出していた。
そして声の人物はすごいスピードでレラジェの腕をぽんと叩き、スマホを地面にたたき落とす。
こちらを向いたその顔は、師・アドラマリクのものだった。
「せ、先生!?」
「どうして、ここに?」
「メガネを外したアルトを麻袋に投げ込むために……」
「よぉ、アドラマリク。やっぱお前か」
メガネを外した有登が、ゆっくり3人のほうを見る。
今までの彼とは似ても似つかないそのオーラ。
目からほとばしる眼光は威圧感たっぷりで、とても長いこと凝視できそうになかった。
アドラマリクはロノウェの手から麻袋を奪い、両手でそれを有登の頭に振り下ろそうとした。
それに気づいた有登は、自分が外したメガネをぽいっと麻袋に投げ入れる。
メガネを飲み込んだそれは一瞬内側からまばゆい光を放ち、そのまま跡形もなく消えてしまった。
「あっ、メガネが麻袋に……!」
「そ、そんな……」
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