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「あなた方2人に卒業最終試験を課しましょう。勝ったほうを『邪(イーヴィル)・サモンド学院』113期の主席卒業とします」  召喚悪魔を目指す悪魔(もの)たちが通う「邪(イーヴィル)・サモンド学院」。  そしてこの学院の象徴である2つの尖塔を有する大邪堂(だいじゃどう)が、敷地内中央にそびえ立つ。  内部にある小部屋の1つでは、床全面が六芒星に形作られた魔法陣が紫色の淡い光を放ち、それぞれの頂点部分には松明が灯されていた。  その松明の炎がかすかな風に反応する度、魔法陣の中央にいる3人の影がゆらゆらと揺らめいている。 「ちょ、待ってください、アドラマリク先生! それってサシで勝負しろってこと? レラジェと?」 「何それれ! こっちだってロノウェなんかと勝負すんのイヤだし!」 「俺は嫌とは言ってないけどな、明らかにお前が先に突っかかって来てるけど?」 「どうせ1対1なら勝ち目ないなーとか思ってるる~?」 「腹立つな。その、るる~って。ほんっと腹立つ」 「……ま、まあまあ。いいから続きを聞きなさい」  アドラマリクは、ゆったりとしたローブの袖口から手を出し、鼻頭をくっつけていがみ合う教え子の頭上にそれぞれ乗せた。 「いいですか、やってもらう課題はちょっと厄介です。人間界に行き、ある人物の『メガネを外させる』というものなのですが……」  レラジェもロノウェも一瞬構えかけた表情から一転、眉をひそめて師の顔を見つめた。 「お言葉ですが、それのどこが厄介なんです? 魔法でも呪いでも簡単に済む話って気がするけど」 「わかった、その人が特殊な人間なんじゃないかしらら~」 「いえ、普通の人間です。ですが、その人物には魔力が通用しないのです。もともとサモナーからの依頼で私が呪いをかけるはずだったんですが、一向に効果が出るような様子がなくてですね」 「えっ、先生の魔力が通じない奴をやるんですか?」 「まあ、稀にいるんですよ。何らかの理由で魔力が効かない人間も。相手の意思のチカラのせいとでもいいましょうか」 「意思のチカラら~?」
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