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「雪が降ってきたね」
隆志の声にゆかりは空を見上げた。
そのとき、雪片がふわりとゆかりのメガネの上に落ちた。
「とってあげる」
隆志がそういうと同時にいきなりゆかりのメガネをはずした。
ゆかりは驚いた。
隆志はメガネについた雪片をはらってくれるものと思っていたからだ。
一瞬何が起こったかわからず呆然としているゆかりに、突然隆志の顔が接近した。
「あ、熱い。体が・・・」
ゆかりの頭の中にそんな言葉が浮かんだが、すぐにそれも消え、真っ白になってしまった。
ゆかりの唇を隆志の熱い唇が突然ふさいだのだ。
ゆかりは隆志のがっしりした腕に抱きしめられ、気の遠くなるようなひと時が過ぎた。
それは山科ゆかりにとって大学に入って初めてのスキー合宿でのことだった。
横浜女子大学に入学した山科ゆかりはスキー部に入った。
12月の合宿はいつも長野県にある志賀高原スキー場で行われ、近くで合宿している青慶大学の
スキー部が途中から合宿に合流し指導してくれることになっている。
川口隆志はその青慶大学スキー部の一年生だった。
隆志は青慶大学の付属高校からの進学者で、小さい頃からスキーをやっていて高校時代に
既に一級を取得していた。
都会的雰囲気のお坊ちゃん学校の生徒らしくあか抜けており、格好が良いので誰もが彼の気を引
こうとしていた。
なかには隆志の前でわざと転んで気をひこうとする者もいた。
ゆかりもそんな隆志に気をひかれていた。
合同合宿が終わり、ゆかり達は各自の部屋でくつろいでいたとき、上級生から急に集合をかけら
れた。
ゆかりは自室でスキーのときにやっていたコンタクトレンズをはずし、
メガネをかけてくつろいでいた。
突然の呼び出しに慌てて、化粧もせずに、メガネをかけたまま出て行った。
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