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いつからそこにいるのか分からないが、私の目の前に一体のロボットがいる。
本来は家の仕事や手伝いをしていたはずだが、あちこち古くなり、上手く動かなくなっていた。
人間の声を聞くのも、それを理解して、返事を返すのも、すごく時間がかかる。
それがまたとても不明瞭な音声だったりする。
せっかちな父は、このロボットを邪魔もの扱いしていたが、私は大好きだった。
学校から帰ると、私はまずこのロボットにその日の出来事を報告した。
私が大人になり、家を出て、しばらくしてから帰った時、そのロボットは昔と変わらず、猫を膝の上に乗せたまま、同じところに座っていた。
しかし、何だか浮かない様子でいるので、聞いて見ると、どうやらものが良く見えなくなってしまったとのことだった。
眼の部分にあるカメラのレンズを掃除してやったが、上手く行かない。
膝の上の猫も、どこか心配げだ。
その時、ふと思いついた。
父が使っていた老眼鏡をかけさせてみてはどうだろう。
でも、ロボットに老眼鏡?
私はたまらなくおかしくなってきた。
上手く目の位置に来るように、父の老眼鏡を掛けてやる。
すると、このおかしなロボットの姿に、ますます笑いがこみ上げてきた。
笑ってごめん。
お前もおじいちゃんになっちゃったな。
私がそう言うと、
ロボットもどこか笑顔になったような気がした。
坊ちゃん、よく見えますよ。
ありがとうございます。
そうか、私は少し驚きながら、何とはなしに聞いてみた。
ところでお前はどんなロボットなんだ?
はい、私はできるだけ人間に近づくようにプログラムされています。
少しは人間に見えるようになりましたか?
(おわり)
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