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「初対面でよ、互いのことなんも知らねェでわざわざ目合わしたり顔赤くしたりって相当な"バカ"だぞ。」
樹は俺に噛みつきそうな距離で、バカを思い切り強調して、そう言った。
「…でも俺頭良い子も…」
「だーかーらー…そういう問題じゃねェんだよ。感覚がバカになっちまうんだよ、オメェみたいな人たらしに引っかかると。」
…褒めてる?貶してる?
……十中八九貶してるよね、樹のことだし。
「樹は引っかからないんだ。」
俺は屋上の柵に肘をつき、樹を見て少しだけニヤって笑った。樹はげんなりとした表情で呆れていた。誠くんショック。
「引っかかるわけねェだろお前みたいな腹黒。」
「隠してるだけマシでしょ。」
「そっちのがタチ悪ィんだよアホ。」
樹は俺の頭をペチッと軽く叩いてわざとらしく溜め息をついた。
「……でも悔しくない?あの先生だけ落ちてくれないって。」
「……あー……まぁ…その気持ちは分かるかも。」
「今明らかに別のこと想像したでしょ。皆俺見てビビるのに彼奴だけズカズカ来るのマジで腹立つみたいな。」
「…やるなぁお前!」
「馬鹿。」
無駄にハキハキとした声で褒められてカチンときた俺は、樹のフードでガッと顔を覆って、そのまま屋上を出た。
「…反省文かなぁ…職員室いこ。」
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