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山口先生が、こっちを向かない。
別にお互いそんな気はなくても、一度くらい顔を合わせることはある筈だよね。目を合わせろとまでは言わないし。
他の人に向かっては話す癖に、俺の方には向かない。分かってる、避けられてるって。
…でもなんで…?
理由もなく好かれることはあっても、避けられることはなかった。俺なんか避けられるようなことした…?
まだ口説いてもないのに?
意味分かんない。
山口先生の声なんか全然耳に入ってこなくて、ひたすら板書を見つめてぼーっとしてた。
「辻君、最初の授業早々上の空ですか?」
…見てない…よね?
え、あの人後ろに目あんの?
「僕の授業はつまらないですか?」
「はい、つまらないです。」
「……。」
…怒った?わかんない。
表情全然変わらない、綺麗な顔。
「先生の事傷つけちゃったので反省してきます。」
「…はい?」
「屋上行って反省してきますね。」
「……それサボりじゃ…」
俺、山口先生の視界に割り込むためなら手段は選ばないよ、きっと。
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